オープニング 我々は母なるドニへと戻ってきた。 しかしそこで見たものは、壮大さを誇った建物は朽ち果て、 ドニの人々は憎悪の炎に焼き尽くされていた。憎悪は偏見と 限りない欲望から生まれそして炎と化し、一瞬にしてドニを 覆い尽くしたのであろう。 そして私は別の”時代”を書き記す事を決意した。 生き残ったドニの人々がもう一度やり直せる時代を。過去の 悲劇から解放された時代を。 愛する妻が私に微笑む。そう未来のみを見つめて生きるのだ。 そして私はこの”レリーシャンの書”を書き綴った。 生まれたばかりの娘と、いつの日か共に時代の旅に出かける 事を夢見て。 娘のイーシャをドニの人々に会わせてみたい。彼らは今も自 力で新しい生活を築いているだろう。 彼らは私に希望を与えてくれる。過去の過ちを正し、そして 私を輝かしい未来へと導いてくれるのだ。 |
タモン宛の手紙 タモン殿 ナラの南京錠の軒で早々の返事をくれたことを感謝している。君も 聞いているだろうが、最近、トマーナの警備が重要な問題になって いる。ひょっとしたら、キャサリンが言うように、私の取り越し苦 労なのかもしれない。 だが、誰かが私の書斎に忍び込み、日記を全部読んでしまったかも しれないと思うと、内心穏やかではいられない。ミスト島の私の図 書館にあった数多くの「本」を実の息子であるシーラスとアクナー が燃やしてしまってからと言うもの、私の自分の世界とのつながりが、 どれほど微妙なものであったか、イヤと言う程思い知らされている。 燃やされた本は未だに直らず、それぞれの「時代」を訪れて、住人達 の生存を確認する事も出来ないでいる。 南京錠を付けたところで状況が変わる訳ではないが、忍び込まれる心 配はずいぶんと薄らぐに違いない。 敬具 アトラス |