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SSの幼生


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残り夢
 その日、私はいつも行く店の見慣れた店員からメモをもらった。
 たまたま店に置いてあるロッカーを利用した時に、中身を見たらしい。中には私が集めていたある芸能人の資料があった。
 数日前にその芸能人は街の近くまで来て、この店にも寄ったらしい。その時に、何かしらの資料を店員はもらったのだという。
 私はうれしくて、その店員と資料を集めている芸能人の話をした。熱っぽく語る私の姿を見て、周囲の人は冷たい視線を送っていた。ちょうど店に入ってきた友人も、遠巻きに見ながら他人のフリをしている。彼がそうせざるを得なかった状況をくみ取ることができず、彼に挨拶をしてしまった。今思えば愚かしい行為だと反省するが、彼はそそくさと店の棚へ隠れた。
 翌日、私はその店の事務室のような所へ案内された。そこには、店に勤める女性と数名の店員がいた。女性は、そっと箱を机に置き開けた。中には、私が探していた資料が入っていた。
 じっくりと私はその資料を読んだ。そして、手に入ったことと人の優しさに感謝した。自然と目頭が熱くなり、私は少し泣いた。
 しばらくの間私は涙を流していた。そんなとき、急に周囲が騒がしくなり警察官が数名入り込んできた。彼らは私には目もくれず店員達を取り囲んだ。
「これは、何なのですか?」
 私は目の前にいた女性に話しかけた。
「昔、いろいろとあったのよ。」
 女性は哀しそうな声でいった。その目は、何かをあきらめたようなものが受け取れた。
「ねぇ、資料を渡したついでに一つお願いしてもいいかな?」
 どうやら警察はこの女性にも用事があるらしい。彼女は私にそっと話しかけた。
「猫・・・ですか?」
 私のこの言葉を聞き、彼女は目を見張った。
「あら、知っていたの?」
 店の近くへ住み着いている野良猫にえさをやっている彼女の姿を私は思い浮かべつつ、私はうなずいた。
 その時になって、急に私は彼女へ恋心を抱いた。

 しかし、話はこれ以上展開しなかった。警察官はなぜ彼女たちを取り囲んだのか、そして私は誰の資料を集めていたのか、この地区で昔何があったのか、そして私が彼女から受け取った資料の内容は何だったのか。それらは全て闇の中である。
 これらは時間が駆け抜けるときに生まれた風が、どこかへさらっていったようだ。今はただ、記憶の一部として私の頭の中にこびりついているにすぎない。この不可思議な話をいつまでもとどめ、真実を調べ続けられるようここへ記そう。


 おもしろさはいっさい問いません。
 ただ、管理人が見た変な夢です。しょせん、夢ですよ・・・。



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