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SSの幼生


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どうして物は落ちるのか
 友人が尋ねてきたので彼はくるりと振り向いた。
「また議論をふっかけてきたか?」
「そういうな。ご不満のようだが、お前はこの真実が分かるのか?」
 二人はそれ以上何も話さず、散歩道を歩き、近くにあった石に腰掛けた。
「物が落ちる理由か・・・。それは、万有引力の法則に従い、空中に漂う物質は地球の中心に向かう力を受けるのだろうな。それ以外にも月や星々、周りにある小石などの重力もあるがそれらは非常に微量なために、無視していいものだ。つまり、物が落ちるのは地球に引かれているからさ。」
「・・・。」
「すごいと思わないか? ”見えざる手”だよ、大地からの。」
「”見えざる手”か・・・。先ほどのお前の説明は全く理解できなかったが、その言葉は理解できる気がする。」
「妙に聞き分けがいいな。それならば、なぜこの手は大地に引っ張り込もうと考えているか分かるか?」
「それは力を伝える超微粒子グラビトンが支えを失った物質に衝突し、下へ・・・いや、大地へ向かうエネルギーを与えているためだろう。この粒子は衝突した瞬間に質量とその存在を失い、エネルギーへと変化するのさ。ついでに、お前の言う”見えざる手”とやらがこれを所有しているはずだ。」
「・・・。」
「そうそう、なぜ引っ張り込もうとしているかと言えば、大地が強欲なのだろうな。」
「先ほどのお前の説明は理解できないが、強欲だというのは同感だ。」
「ああ、強欲さ。危険なほどね。」
「宇宙誕生が起き、太陽系が成立し地球に生命が宿った。だが、生命が宿る前から大地というものは存在し、彼らは己の上を闊歩するもの全てを”所有”しようとしたよな。」
「あぁ。始めは宇宙から落ちてきた隕石や、チリなどだったが、それ以外にも水素や水、そして大気、他にもその後で生まれた様々な微生物をな。」
 二人は立ち上がり、歩いた。だが、しばらくすると疲れたらしく座り込み、空を見て苦々しげに言った。
「しかし、もっと恐ろしいのは空間だ。空間というのは、内部にあるものを決して逃そうとしない。それどころか、空間内にあるものが空間外へ移動しても、”その場所が空間となるよう”に仕向けられている。」
「そう考えると、大地など空間の所有物ということになるが、いずれにせよどちらも強欲なことは確かだ。」
「たとえ空間にもしくは大地に支配されていようとも、我々はかならずやそれらに支配されない完全に独立した存在になりたいものだ・・・。」
 一番始めに質問をふっかけた方がそうつぶやいた。しかし、もう一人は相づちを打たずに反論した。
「忘れていたが、それでは”存在”というものに支配されていることになる。何者にも支配されない超越した”存在”・・・。」
 二人はため息をついた。どうやら、存在というものからは逃れられそうにない。
「どうやら我々は不毛の議論をしていたようだ。」
「そうだな。やはり、どう考えてもここで議論が止まってしまう。では、全ての支配から逃れるには・・・。」
 二人は目をつぶり、見えざる手に引かれながら大地に飛び込んでいった。肉体は、大地に衝突し受けぺちゃんこになり、二人は大地や空間、それから存在による支配からも解放された。ただ、亡骸だけが彼らの所有物となった。
 もはやどの空間に行っても二人は存在しない。


 ちょっと哲学的というか宗教的な内容になってしまいましたね。タイトルがあるBLのドラマっぽいのは許してください。それが何か分からないならば、気にしないでください。



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