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SSの幼生


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逸話2
 逸話というものの中には、嘘と真実が入り交じっている。しかし、本質的な部分では真実を語っているという誠におもしろい存在である。
 あなたは「逸話と正確に伝える」ということは正しいことだと思うだろうか。それとも、その逸話を足がかりとして真実を探し続けることこそが正しいと思うだろうか。

 あるところに、一人の博士がいた。彼は自分の研究所を持ち、一人の優秀な助手を雇い研究を行っていた。
 彼らの研究というのは、反物質の世界を証明することであった。未知の世界を調べるのであるから、様々な既存の機材を用意するだけではなく、自分で設計したものを特別に作ってもらう必要があり、かなり費用はかかったらしい。しかし、この博士も非常に優秀であり、過去の発明で得た利益を湯水のごとく使っていたが、とても使い尽くせるものではなかったという。
 それはそうと、彼は長期間の研究でついに反物質の粒子を入手する成功した。反物質の粒子の研究をし、”物質”の世界のそれと混じり合っても危険はないということが証明されると、自分たちでその世界を見るための努力をした。
 とはいえ、万が一に備え、一度無の空間へ移動してから、反物質の世界へ移動したり、移動に使う乗り物は中性子で厚くコーティングするという慎重ぶりであった。ちなみに博士の過去の成功はこの慎重さ故とも言われているが、彼の逸話の中に慎重さを歌うものは一つもない。
 博士と助手は、反物質の世界を見て驚愕したという。反物質の世界では物理法則の中に万有斥力が含まれており、宇宙は水素とヘリウムしかない殺風景の世界であった。二人は自分たちが今まで見ていた宇宙同じものが広がっていることを期待しており、さぞかし残念がったが、そこで反物質の研究から手を引くことはなかった。
 二人は核融合発電を反物質の世界で行うことを考えた。自分たちで電力会社を経営し、新たな財源を確保するのが目的であった。反物質の世界には燃料の水素とヘリウムは無限と言っていいほどあるのだし、仮に反物質の世界に星が誕生したとしても全くリスクはないと考えたようだ。
 常に幸運の女神が博士について回っているかのように、発電装置の開発はあっという間に成功し、二人は反物質の世界で発電を開始した。しかし、彼ら曰く”時期”が悪かったらしい。自分たちと同じ広さの”宇宙空間”が広がっているはずなのだが、水素とヘリウムだけの宇宙では粒子同士の密度が高すぎた。発電量を上げるため、粒子の取り込み量を多くすると、装置内部に想定以上の粒子が流れ込んでしまい、装置ごと大爆発を起こしてしまう状況であったのだ。
 この取り込む量の調整は非常に微妙あり、今後何台発電機を破壊すれば成功するか分からないし、宇宙が十分に広がるのを待つのは時間がかかりすぎる。そのため、博士は自分の研究所で使う電力だけをまかなうようにした。
 発電装置を爆発してしまうたびに、反物質の世界には変化が起き始めていた。小さなチリが生まれ、それが徐々に集まり砂利程度の物質が漂うようになっていたのだ。今後どのようになるかは想像はつかないが、星が生まれる道を歩み出している。
 それから、博士は発電装置を稼働させるときにいつもこう言っていたという。「光あれ」と。


 これが15000HITなの? と疑問を持った方。その通りです。
 期待していたものほどすごくはないかもしれませんが、逸話の焼き直しです。



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