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SSの幼生


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逸話
 研究室にこもっていた助手が、博士の下へ駆け寄ってきた。
「先生! お昼寝をしている場合ではありません! 映りましたよ!」
「何!? 本当か!」
 先ほどまで気持ちよさそうに眠っていた博士は、むくっとベッドから起きあがり研究室へ歩き出した。
「で、どんな感じだ?」
「まぁ・・・一応、映っています。」
 助手が口ごもるので、博士は首を傾げたが、そのまま研究室の扉を開き、中に入った。そして、緑色のモニターを見てつぶやいた。
「確かにそれらしいものがモニターに映っているなぁ・・・。」
「えぇ・・・。」
「で、この試験管に入っているのは反物質の世界にある・・・何だ?」
「窒素です。あの装置で反物質の世界に接続したときに、入手しました」
 博士は反物質の世界と接続している巨大な装置を見てから、ボタンをいくつか操作し試験管の中身が窒素であることを確認した。それから彼は反物質の世界を映しているモニターの倍率をいじり、何度も何度も何かを確認しようとした。
「これが反物質の世界だというのならば、なぜ物体が無いのだ!?」
「やはり、万有斥力が働いており、反物質の宇宙は、原子が存在しても星が生まれることなく、ただただ広がり続けているだけなのですね。」
 助手が小さな声で言った。
「そんな! これがやはり真実だったとは!!」
 この日、博士は永遠に物理学史にその名を刻まれるようになった。しかも、飲み会で偶然思いついた「反物質は万有斥力」という冗談を証明するために努力し続けた結果であるという逸話と一緒に。


 うーん・・・。早速、没にして別のプロットで書き直そうかと検討しています。しかし、どうしても捨てがたいので「独り言」へ移動するかもしれません。



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