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SSの幼生


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惑星水族館
 ある不毛の小型の惑星に、宇宙船が降り立ち、様々な機材を運び出した。大地に微量な放射線を放つペンを使って線を引き、区画を整備したり、大地を削りパイプを投入したり、一方からは岩にしか見えないマジックミラーを埋め込んだりした。
 また、野球のドームほどの建物をいくつも設置し、その中で植物を育てた。そして、ある程度中の植物が育つと、ドーム同士を接続し、酸素を共有させた。ま た、植物に頼って酸素を増やすだけでは時間がかかりすぎるので、大規模な化学反応も使った。それ以外にも、地面に穴を開け密度の高い物質を大量に注ぎ込み 星の質量を増やして、酸素が宇宙へ逃げていかないようにしたり、上空で特殊な操作を行い雨を降らせ、海を作る努力もした。
 ある程度の大きさの”海”を作ると、海藻を植えたり、プランクトンをまいた。海が巨大になるに連れて、貝やカニといった水中の小動物を送り込み、さらに海が大きくなると様々な魚を送り込んだ。水中生物を送り込むのとほぼ同時進行で、陸上動物をドーム中にも送り込んだ。
 他にも隕石の墜落で生態系が破壊されないように、近づいた小惑星を破壊する衛星を惑星の軌道上に配置した。

 大気中の酸素が、生物が住める濃度になったとき、ドームの壁は取り外され、植物も動物も文字通り大地に放り出された。
 いったい、どれほどの費用と時間をかけたのかは分からないが、ついに地表全体の80%が海という立派な水の惑星が完成したのだ。
 そして、以前は改造作業に使っていたパイプ用の乗り物を、大勢の人が乗れる車に変え、小型の惑星を改造した巨大水族館の大部分が完成したのだ。暮らしている生き物は常に自然のままの姿であり、維持の手間が不要の素晴らしい巨大水族館である。
 この惑星の周期で翌日に当たるとき、水族館の開会式があった。権力者達が集まり、この素晴らしい水族館の完成を祝福した。
 しかし、彼らはこの水族館がまだ画竜点睛に欠けていることを知っていた。出席者達は水平線の見える岸壁に立ち、宇宙船があるものを運んでくるのをじっと 見つめていた。そして、上空から現れた宇宙船の腹部が開き、木製の帆船がゆっくりと着水する場面を見たとき、歓声を上げた。帆船が順調に進んでいくのをし ばらく見つめた後、彼らはパイプの中を走る車に乗り、初めての水族館見学へ出かけた。
 先ほど船を運んだ宇宙船は、別々の地点に何艘か似たような帆船を着水させた。
 宇宙船が持ってきた帆船は全て、帆の上他の船と区別するべく、黒い布地でドクロが描かれた旗を掲げている。宇宙船の乗組員は、帆船に乗っている野蛮な生き物の姿をおもしろそうに見ていたが、帆船が見えなくなると宇宙船を上昇させ空へ彼方へ消えていった。


 「海賊=水生生物」と宇宙人は見るのかもしれませんよ。これだけ短く話をまとめられたので、管理人としては満足です。
 良作か否かはちょっと不安ですけど。



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