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SSの幼生


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たいこ
 ある神社の改修工事が決定した。かなり古い神社で町の人々からも親しまれていたが、神官が暮らさなくなってから荒れ放題であった。このまま放置しては、 町の伝統が消えるという市民の声が高まり、募金活動、署名活動が始まって、町役場も腰を上げた。
「汚い神社だが、なんだかんだ言って思い出の場所だ。残しておきたいよなぁ。」
 そんなことを言いながら、建設会社の男達が数人神社に入ってきた。建物を新築するので、中にあるものをいったん外へ運び出すためだ。
「ん? 太鼓だ・・・。」
「太鼓ねぇ・・・。そんなものがあるとは知らなかったよ。」
 社員の一人が太鼓を見つけたらしい。彼はホコリを落としてから、バチで叩いた。ドーンという音がして、空気が振動した。建物の老朽化が進んでいるせい か、床もきしんだ気がした。
「おいおい、遊ぶのはやめてさっさと運ぶぞ。」
 そんな声が飛び、太鼓を叩いた社員も仕事に取りかかった。
 神社にはあまり多くのものはなかったので、この日だけで運び出しは終わった。運び出された品物は、会社の倉庫に保管されることになった。
「もしもし、チト建設です。」
 電話番をしていた女性が電話を取った。
「あ・・・はい。いつもお世話になっております。えっ・・・、はい。あ、結構です。えっ? 今すぐ・・・? 分かりました。」
 女性がちょっと動揺していたためか、近くにいた社長が歩いてきた。
「社長、役場の人と博物館の人が、神社にあった品物を見に来るそうです。」
「ふーん。今からか・・・。わしも気になるから、席を空けるぞ。」
 社長はそう言って、外に出て客が来るのを待っていた。それから間もなく車が走ってきて、二人の男性が現れた。女性社員はそれを確認すると、お茶を用意し 倉庫へと運んでいった。
「ほぉ・・・珍しい太鼓ですね。」
 博物館に勤めるエフ氏はじろじろと太鼓を眺めている。
「エフさん、そんなに気になりますか?」
「えぇ、この太鼓に張られている革は見たこともないものが使われています。・・・どれ、一度鳴らしてみましょうか。」
 エフ氏は近くにあったバチで太鼓を叩いた。ドーンという大きな音が響き、地面が揺れお茶がこぼれた。揺れは太鼓の革が揺れている間続き、太鼓の音が消え ると止まった。
「こ、これは・・・。」
 エフ氏は尻餅をついたまま、太鼓を見つめた。

 次の日から本格的な調査が進められた。地元新聞も”叩くと地震を起こす太鼓”として記事を出した。人々は珍しがってその太鼓を軽く叩き、地震に驚いた。 学者達は色々な装置を持ち込み、仕組みを調べようとしたが現代の技術では見当が付かないチップが並んでおり解析はできそうになかった。この太鼓の話は政府 にも伝わり、議員の間でも話題となった。そして、この太鼓は兵器になるということで破壊されることになってしまった。
 殺風景な平地の真ん中に太鼓は置かれた。そこに大きな鉄球をつけたクレーン車が現れた。技術者が位置を確かめて、上にあげた手を下におろした時、鉄球が 勢いよく太鼓に衝突した。太鼓もそれなりに大きかったので、革が破れただけで周りの枠は壊れなかった。しかし、もう地震を起こすことはできない。
 技術者がそれを確認して、無線で報告した時、大きな地鳴りがした。大地が崩れ巨大な穴が太鼓の残骸もクレーン車も、神社もチト建設の倉庫も、そして町全 体を飲み込んでいった。


 音楽会の発表がいつも太鼓演奏というクラスがありました。あの迫力はすごかった ですよ。



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