目次 > SSの幼生 の目次 > 貿易ゲーム
SSの幼生


| << 前の作品へ | SSの幼生 の目次へ | 次の作品へ >> |



貿易ゲーム
「さぁ・・・貿易ゲーム、スタート!!」
 審判の声が響く。

 ―――Aチームの会話。
「俺たちのチームは、島国だ・・・。他国との貿易経路を確保するに資金が必要だが、資金があっても原料がない。どうしよう?」
「うーん・・・。とりあえず、この地図を見て最も近い国へ貿易経路を確保しようか・・・。」
「資金はたくさんあるから問題なしとしても、原料が少ないから経路を確保した後の舵取りは難しいぞ・・・。」
 Aチームの面々は、作業用の机から中央に置かれたワールドマップを見つめた。彼らがいるA国は海の真ん中にいると言うことになっている。正確に言うと、 他国との距離が非常に長いのだ。距離はマス単位で決められており、一マス分の貿易経路確保には手持ちの原料を審判に渡さなければならない。
「よしっ! 原料を半分に分けよう。幸い手先の器用な人間ばかりだ。良質の品を持ってD国と貿易をするぞ!」
 この世界に存在するのは、A国が”たくさんある”といっていた「資金」、A国が”少ない”と言っていた「原料」、そして原料を加工して貿易商品にする 「機材」、最後にもう一つ・・・。これは後々話そう。
「ふぅ・・・。1分に一マスしか経路を確保できないから時間がかかるな・・・。」
「安心しろ、商品が徐々にそろいつつある。ほらっ、六角形の割り箸と、この見事な円い紙!!」
「これなら遅れをそうだな・・・。」
 貿易用の商品には、割り箸で作ったものと紙で作ったものがある。割り箸でできたものは、八角形が最も高価で、紙のものは円形のもので大きいものほど価値 がある。

 ―――Bチームの会話。
「うーん。資金と機材がないのに、原料だけは山ほどある。しかも、二国と隣接しているから貿易は非常にやりやすい・・・。」
「でも、俺たちあまり起用じゃないからなぁ・・・。」
「どうする?」
「当分の間、鎖国をしてA国への貿易経路を確保するのも手だな。あっちには手先の器用な人間が多いから人材を引き抜くか交換することができる。」
 チームの人間を引き抜いたり、交換したりすることは当然できる。引き抜きの場合は、最低価格以上を相手に渡せばよいし、交換の場合はその人間とモノを両 方渡すこともできる。
 また、どちらかの国が貿易経路を確保してくれれば両方向での貿易が可能になる。そして、気にくわなければいっさい関係を持たないこともできるのだ。
「それはやめた方がいい。僕が察するにA国はD国への経路を確保しにくるはずだ。それならば、隣接するD国とE国と貿易をしてそれなりの利益を確保してか らA国から人材を引き抜いた方がいいんじゃないか?」
「・・・だな。」
「仕方ない。あるもので何とかするか。じゃぁ、経路を確保する奴と、商品を作る奴に別れてさっさと始めようか。」
 ちなみに、ある国が確保した経路と、他の国の経路が重なった場合は、経路がその国とも自由に貿易ができる。

 ―――Cチームの会話
「他の国の様子はよくわからないが、資金も原料も機材も武器もそれなりにあるな。」
「あぁ、だが困ったことに他の国との距離がどこも離れている。貿易を開始するにはかなりの時間がかかるなぁ。」
 武器は当然、戦争に使うものである。ワールドマップ上にはそれぞれの国とマスが描かれており、国の上には旗が立っている。その旗が戦争のときに重要な意 味を持つのだが・・・。
「原料の数から考えて、どの国と貿易経路を確保しても、確保した頃にはほとんど残っていない。貿易はそこそこにして、金のある国に戦争を仕掛けてみる か?」
「悪くはないが・・・。他の国の人間はわかっても、持っているモノがわからない。時期を見極めるのは慎重に行かなくては。」
「B、D、Eのどの国から経路を確保する?」
「Bだな。三つの国の中間にあるから何かと便利だろう。」
「よし、戦争することがばれないように落ち着いて行動しよう!!」

 ―――Dチームの会話
「なんか、他のチームより人数が多いな・・・。」
「あぁ、確かに多い。これはラッキーだぜ。しかし、人数が多いだけですぐに貿易ができそうなのはB国だけだぜ。」
「まいったなぁ・・・。これだけ原料も機材もそろっているというのに。」
「しかもこの資金の量。これなら相当のことができるよ。」
「こりゃかなり有利にことが運べそうだ。」
「それなりに武器もあるが・・・、武器を扱う道具がないから困ったなぁ・・・。かといって、他国から輸入するのは慎重にやらないと・・・。警戒されるから なぁ。」
 戦争用の武器とは、ゴムボールである。これを割り箸と輪ゴムでパチンコを作り、作業用の机からワールドマップ上の相手国へ飛ばすのだ。これがゴムボール が相手国の領土内へ落ちれば宣戦布告。相手国は5分以内に対応を考えなければならない。ちなみに、相手国の領土に落ちても落ちなくても、とばしたゴムボー ルは相手国のものになる。
 相手国の選択肢は全部で3つ。応戦するか、敗北を認め賠償金を支払う、もしくは植民地になる。戦争中は、パチンコでゴムボールを飛ばすことしか許されな い。ワールドマップ上の相手国の旗を先に倒した方が勝ちである。やはり負けた国は、賠償金を支払うか植民地になるしかない。
「なに、これだけ有利なんだ。戦争する必要はないさ。」
「ところで、A国とは俺たちのチームがもっとも近いみたいだ。どうする?」
「ま、あっちから勝手に近づいてくるだろう。それなりの資金があれば、こっちからも力を貸そうじゃないか。」
「そうだな。」

 ―――Eチームの会話
「・・・。ずいぶんと割り箸と輪ゴム、ゴムボールが多いなぁ。戦争でもしろと言うのか?」
「やめとけ。俺たちの作業台からはどの国も距離がある。ねらうのは難しいぞ。」
「そうだな。仮にC国だったら近くから狙えたのにな。」
「まぁいいさ。紙と機材がそれなりの量がある。それに、B国とも近いし。B国との貿易で力を付けて、これからの対応を決めようか。」
「どうでもいい話だが・・・、D国ともずいぶん近くないか? このルートをたどればBこくの経路から4マス足すだけで貿易ができる。」
 一人の青年が各チームに配られたワールドマップを見て言う。
「確かに・・・。完全な盲点だった。」
「じゃぁ、B国とD国との貿易で力を付けていけばいいだろうな。」
「よく考えると、この国資金がないな・・・。」
「それならば良質の製品を作っていけばいいさ。」

 他国との貿易で所有物の状況を教えるか教えないかは自由である。当然、嘘をついてもいいし、正直にホイホイ答えてもよい。とにかく、ゲーム終了時に最も 力を付けていればいいのだ。

「B国の方、これとそれ2つと交換しませんか?」
 それぞれの国の作業台は他国から見えないようになっている。展示用の机に製品を置き、B国とD国が交渉している。
「うーん、輪ゴム一個足してくれませんか?」
「どうする?」
「いいんじゃない? じゃ、交渉成立ですね。」

「ふぅっ、ありがとうございます。そちらの協力で、いくぶんか経路確保の費用が浮きました。」
「いやいや、そちらの製品にも興味がありますから・・・。」
「ではD国の方、この見事な円はどうでしょう?」
「おぉ、すごいですね。非常に魅力的な商品です。どうでしょう、これと交換しては・・・。」
「うーむ・・・。」

「それでは、B国の方から今もらったこれと、私たちが持ってきたこれを足して、D国のその割り箸10本と交換しましょう。」
「いいですね。D国は三角定規がなくて苦労していたんですよ。」

「輪ゴムをありがとうございます。それでは、この四角と・・・。」
「いやぁ、C国って他の国とも距離あるから大変でしょう。」
「そんなことはないですよ。資金も原料も十分ありますから、これからが勝負です。」

「A国の小川さんと、うちの清水さんを交換しませんか? 割り箸20本を付けますよ。」
「こちらとしては、割り箸15本と、輪ゴムが10個ほど欲しいのですが・・・。輪ゴムあります?」
「・・・、いいでしょう。」

 A国とD国とのメンバーの交換が成立したとき、事件が起きた。C国がB国に宣戦布告をしたのだ。
「まずい! こっちはゴムボールがない。他国との貿易を円滑するために手を出さなかったが・・・。確保できるか?」
「ぎりぎりまで粘ってみよう。とにかく、割り箸と輪ゴムで戦う準備だけはしよう。」

「さて、B国がどう出るか・・・。勝った場合は、機材を優先的にもらっていくか・・・。」 C国の作業台で薄笑いをしている面々がいる。

「C国が宣戦布告か・・・。B国とはよく貿易をするから、ゴムボールを渡していいものかなぁ・・・。」
「もしB国がそれで負けてしまったらどうする? C国は俺たちD国にも戦争を仕掛けるかもしれない。武器は持っていた方がいいぞ。」
「だが、相変わらず輪ゴムと割り箸は少ない・・・。この状況ではE国もなかなかくれないだろうし・・・。」
 D国の作業台では制作チームが考え込んでいた。その時、貿易を担当しているメンバーが入ってきた。
「B国が割り箸15本とゴムボールを交換してくれと言ってきた。どうする?」
「マジか? それならば武器が作れる。こっちはボールが6個あるから、仕方ない・・・。ほらっ。」
「わかった。」
 こうしてB国へゴムボールが渡された。

 その瞬間、B国とC国が戦争状態になった。ワールドマップと作業台との距離の差は圧倒的で、C国は一発ボールを放ちB国の旗を倒した。一方、B国の飛ば したボールは変な方向へ飛んでいってしまった。
「さて、B国は俺たちの植民地なってもらおう!」
 植民地支配。それは、30分に一度、植民地の国は支配国に材料か資金を無条件で渡さなければならない。植民地支配を解消するには、支配国の旗をゴムボー ルで倒すしかないのだ。

「おい、C国がB国を植民地にしたぞ。よく考えれば、俺たちも比較的、作業台とワールドマップが近い。いっちょ戦争をしてみるか?」
「どことだよ?」
「D国さ。よく見ろ、俺たちよりも明らかに作業台からワールドマップまでの距離がある。これなら有利に戦えるさ。」
「よしっ、今から5分後に宣戦布告の準備だ。」

「C国が宣戦布告したら、次はA国か・・・。どうも雲行きが怪しい。幸い僕たちはどこにも狙われていないからいいけど。」
「あぁ、外部へ全く情報を漏らさなかったのが幸いしているな。どの国も俺たちが何を持っているか全然わからないから。わかるのは取引用の商品だ け・・・。」
「・・・、しかし戦争がこうも頻繁に続くと貿易ゲームもおもしろくないな。A国とD国の戦争が終わったら、勝った国に攻撃しないか? それで、植民地支配 を解消して平和な貿易を隔離した方がいいと思うんだが。」
「それもそうだな。それじゃぁ、武器を使う練習をした方がいいね。ワールドマップとの距離があるし。」

「さて、俺たちA国はD国を植民地にする気は全くない。さっき交換した小川さんと、そこにあるゴムボールを全ていただこうか?」
「それは卑怯だろ!」
 A国とD国との交渉の間に審判が近寄ってきた。
「ゴムボール全てを渡すことはできない。1個だけD国に残しておくように。」
「・・・それならいいか?」
「仕方ない・・・。」

「おい、A国はD国を植民地にしなかったぞ。」
「まぁいい。予定通り、C国とA国に攻撃だ。」
「C国はB、D、A国と貿易をしているがあまり儲かっていないようだ。しかし、どれだけの武器を持っているか怪しいなぁ・・・。」
「それならA国はもっと驚異だ。資金も武器も大量に持っているからな。」
「ま、一か八かだ。とにかく世界平和のために・・・。」
 E国はA、C国に同時に宣戦布告をした。A、C両国とも応戦の構えを示した。E国はA、C国のどちらよりも作業台とワールドマップの距離があったが、あ らかじめ練習をした成果なのか、見事な勝利で戦争が終了した。
「C国からは割り箸10本と輪ゴム20個をもらう。」
 E国とC国の間に審判が近寄ってきた。
「C国は戦争に負けたので、E国はB国を植民地にすることもできますがどうします?」
「B国は独立させる。」

「A国からは紙30枚とゴムボール10個をもらう。」
「さすがにゴムボール10個は違反ですね。紙30枚をもらうのならば、5個が限度でしょう。」
「・・・、仕方がない紙はそのままでゴムボールは5個です。」
 審判の言葉に、E国は素直に従った。

「さて、これで平和が戻った。しかし、A国にはまだ武器が大量にあるな。」
「ここは取引台に、いくつか武器を展示してみるか。意外と抑止力になりそうだ。」
「あぁ、そうするか。」

 こうして貿易ゲームは続いていく・・・


 どこかで聞いたような、聞かなかったような話・・・。  普通の貿易ゲームはここまで細かいことはできないでしょうが、 実際にやるとおもしろいかもしれません。終わった後の後味は悪そ うですが。



| << 前の作品へ | SSの幼生 の目次へ | 次の作品へ >> |


SSの幼生

| 目次へ戻る | ページの上部へ |