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SSの幼生


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茜雲
「まだかなぁ・・・」
 僕は生徒会室の椅子に座り込んだ。
 ・・・、ここは学校の生徒会室。今日は木曜日で、部活が全て休みの日だから夕方になると異常なまでに静かだ。部活が休みだから、当然生徒会の活動は無い のだが・・・
 議長の先輩が僕を呼んだのだ。
 季節はもう秋で、夕日が真っ白な壁を赤く染めている。
「もうすぐ4:30だ・・・」
 予定の時間は4:20分だった。しかし、先輩はまだ来ない。
「ふぅ・・・、僕、何か悪いことしちゃったかなぁ・・・」

 入学して早々、クラスの中で代議委員を決めた。その時、くじ引きで当たり(?)を引いた僕は見事に代議委員になったのだ。
 先輩は、見事な司会をかわれ2年生なのに議長をやっていた。そして、3年生が生徒会から引退し、引継の後も彼は議長をやっている。
 その頃からだろうか・・・僕は急に先輩の視線が気になるようになった。会議中などはまんべんなく周りを見る必要があり、3年生がいないために見られる頻 度が上がったためかもしれない。しかし、気になる。
 どこか冷めたような、人の心を見抜いているような鋭く深みのある目の持ち主だったが、どうも会議の最中に僕を注視している気がする。しかも、最近は会議 の最中、暇さえあれば僕を見ている気がするのだ。先輩は霊感があるという噂があり、僕に霊が取り憑いたのを眺めているのかもしれない。

「ごめん、呼び出したのがこっちなのに・・・」
 足音も立てずに、いきなり先輩が現れた。走ってきたらしくほおは赤くなり、息切れはしているが、僕は足音を聞いていなかった。
「いいですよ・・・、待つのはなれていますから。」
「そうかい、それならいいが・・・。俺はよく人を待たせる性格だから・・・」
「・・・?」
 時間正確な先輩にしては珍しいな、と僕は思った。しかも、”人を待たせる性格”なんて言葉を聞いたのは初めてかもしれない。
「ところで、呼び出した訳って・・・」
 僕は椅子から立ち上がった。
「あぁ、そうだそうだ。」
 先輩は微かに笑い、頭をかいた。しかし、その瞬間、その視線が一段と鋭くなった。
「・・・議長?」
 先輩は何か迷っているかのように目を背けた。

「何・・・たいした用事ではないのだがな・・・」
 僕を見た先輩の目は、まるで獣のようだった。その鋭い視線を浴びた僕は、動くことはおろか、呼吸すらできないように感じた。
 先輩はゆっくりと僕に近づき、肩に手を置いた。

 ガタッ!!

 座っていた椅子が倒れるのと同時に、先輩が僕の上にのしかかった。
「痛っ! ・・・議長!?」
 僕の問いかけに先輩は全く答えようとしなかった。それどころか、僕のTシャツのボタンを外し、ベルトをゆるめ始めた。
「議長・・・一体な・・・」
 ”一体何を?”と言いかけた僕の口は、先輩の唇でふさがれた。
「・・・ゴホッ! 僕は男ですよ!!」
 僕は先輩をにらもうとしたが、無駄だった。先輩の視線は強烈で、全く抵抗することができなかった。

「茜・・・」
 僕から顔を離した時、先輩の顔が二重に見えた。そして、その二重の顔の片方がこう言ったのだ。
「あ、茜・・・?」
 茜って一体誰だ? 僕はそう思い、先輩の顔をじっと見つめた。むしろ、それ以外に何もできなかった。先輩の二重に見える顔は、片方はあの鋭い目、もう片 方は親しげな目をしていた。先輩は僕の上着を脱がし終わり、自分も脱ぎ始めていた。
「大五郎・・・やっと会えましたね。」
 それに気づいた時、僕の口からこんな言葉が出た。僕はあわてて周りを見渡し、自分の鼻が二重に見えるのに気づいた。
 その瞬間、僕の体から女性が、先輩の体からもう一人の男性がゆっくりと飛び出し、手をつないで天に昇っていってしまった。

「・・・悪いな、驚かせて。」
 Tシャツのボタンを留めなおしている僕に先輩は言った。
「議長、今のは・・・?」
 先輩は軽く笑いながら僕を見た。その目があまりに好意的で僕は内心かなり動揺してしまった。
「まぁ、話せば長くなるのだが・・・。君に女性の霊が取り憑いてな、観察するにつれて無念の別れを遂げた男を捜していることが分かった。」
「・・・」
 やはり取り憑いていたんだ・・・。
「それで、俺はその男を捜して俺に取り憑かせたんだ。それで、さっきやったように君の体から女性の霊を取り出し、俺に取り憑いた男性の霊と引き合わせたっ て訳よ。まぁ、体から霊を出すには、相手の服を脱がせそれなりの呪文を唱える必要があってな。」
「しかし、キスまでは・・・」
「あれは、俺に取り憑いた男の霊が”勝手に”しただけだ。お前の唇は奪ってないよ。奪ったのは取り憑いていた茜とやら唇だ。」

「そんな事ってあるものかなぁ・・・」
 あれから数日経った。何度考えても夢のようだ。
 時々、唇を押すと、あの時の感覚を思い出す。先輩に取り憑いた男性の霊がキスをしたのなら、僕が呼吸ができずむせるはずがないのに・・・
 もしかしたら、あの女性と男性の霊は幻だったのかもしれない。もっと言えば、そんなものは元々いなくて、先輩はただ・・・
 会議中の先輩の目は相変わらず気になる。ただ僕と目が合ったときは笑っているような気がする。その目は真実を教えてくれた時のものに似ている。あの笑顔 はただ緊張をほぐそうとしたためだけなのか?
「・・・、そうだ。」
 僕は携帯電話を取り出し、先輩にメールを打った。

 来週の木曜日、4:20分に生徒会室に来てくれませんか? お話ししたいことがあります。

 ・・・木曜日、先輩は僕よりも先に生徒会室で待っていた。
「お、時間どおりに来たか・・・」
 足音に気づき、先輩が振り向いた。
「すみません、議長。呼び出したのは僕なのに・・・」
「いや、俺は人を待たせる性格だが、待つのにも慣れているから・・・」
 僕の目をまっすぐに見つめた先輩の手が、僕の肩にかかった。その目の奥に何か燃えるようなものが見えた。


 気にしないでください。ただの、そうただのBL作品ですよ。ハイ。
 女性向けって書いてあるのに、読んじゃった男性諸君・・・まぁ気にするな。そう言って肩をたたいて あげますよ。
 これは、堀江由衣の天使の卵に投稿しましたが没になりました。



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