目次 > SSの幼生 の目次 > 忍び道
SSの幼生


| << 前の作品へ | SSの幼生 の目次へ | 次の作品へ >> |



忍び道
 パタンッ・・・
 梁の上で彼は本を閉じ、筆と本を懐にしまおうとした。
「ちっ!!」
 筆は彼の手をすり抜け、畳の上にぽとりと落ちた。しかも、運の悪いことにちょうど 真横を侍が歩いていたのだ・・・
「くせ者!!!」
 侍の声が響く。だが梁の上にはもう誰もいなかった。

「いたぞ!あの池の近くだ!!」
 たいまつがたかれ、多くの人間が手に武器を持ち走り回っている。
「・・・まずいことになった。この警備体制では壁を越えるのも難しい。かといってほとぼ りがさめるまで隠れ切れるとも思えぬ。」
 茂みの中に隠れた忍者はつぶやきながら、隠し持っていた短刀を抜きはなった。

 茂みから茂みへ、闇から闇へ、死角から死角へ・・・忍者は素早く移動しながら人のいな い壁を探した。
「ここならばいいだろう。」
 周囲には人影はなく、忍者が鍵縄を回し始めた。そして、するすると壁を上り、反対側 を見た。
「よしっ!」
 彼は壁を降り、一気に森の中へと駆け込んでいった。

「お兄さん、お茶でもどうですか?」
 店のばあさんが誘う。
「・・・今日は暑いな。いただこうか・・・。」
「ありがとうございます。」
 旅人に変装した忍者は、腰を下ろし、大切に持っていた本を開いた。これには昨晩まで かかって作り上げた敵国の出城の見取り図が描かれている。
「お茶と、少々の茶菓子を・・・。」
「ありがとう。・・・ん?」
「どうなさいました?」
「いや、こちらの事情だ。」
「これはあいすみません・・・。」
 彼は見取り図にかけた部分が無いか念入りに調べていたがあることに気づいた。それ は自分を雇った城と同じ間取りになっていることだ。
 その瞬間、彼の前に2本の道ができた。図を描き直す道と、そのまま渡す道・・・。どちら の道も今まで以上に深い闇へとつながっていた。


 忍者ってカッコイイですよね。あの黒装束一度来てみたいのですが、あれもコスプ レという分野に入るのでしょうか・・・



| << 前の作品へ | SSの幼生 の目次へ | 次の作品へ >> |


SSの幼生

| 目次へ戻る | ページの上部へ |