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SSの幼生


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学者の墓場
 ある土地に有名な洞窟がある。崖に穴が2つ開いて おり、お互いがつながっている。それだけ聞くと、普通の洞窟のようにしか聞こえないが、その洞窟はなんと途中で湾曲していないのだ。なぜ隣の穴へつながっ ているのかは全く分からないのだが、とにかく不思議なので様々な人が洞窟の中を通り首をかしげた。
 有名になるにつれ、徐々に噂が広がり、ついに何人かの地質学者が調べに来た。彼らは様々な機関の協力により、ありとあらゆる調査方法を使い洞窟を調べ た。しかし、彼らは真実を知ることはできなかった。なぜなら、2年ほど経ったとき、彼らは突然死んでしまったからだ。原因はいっさい分からないが、「疲れ たから少し休む」といって横になったきり、二度と目を開けなかったという。
 あまりに奇妙な死に方のため、死体は解剖されたのだが、ウイルスや放射線などはいっさい確認されなかった。また、地質学者達は洞窟内の空気や微生物、そして放射線の量などを調べており、洞窟内には彼らの死に直結するものが無いことも確認されていた。
 一部には幽霊の仕業だとか、タタリだとか様々な説が出たが、どれも真実味が無く、洞窟には学者が次々と集まった。学者達は持っている知識を総動員し、洞窟を調べ続けた。そして、2年ほど調査を続けているとほとんどの場合死んだ。
 この洞窟は人が死ぬたびに有名になり、その都度勇気ある学者が調査に訪れた。そのために、洞窟の周りは常に人と怪しげな機器で囲まれていた。
 「なぜ洞窟に入ると早死にするのか?」、そして「なぜ洞窟はつながっているのか?」という謎を解明するために、様々な学者が調査に訪れ、真実を知ることなく死んでいくので、洞窟は「学者の墓場」と呼ばれるようになった。

 ある時、オカルト系の学者がおもしろい仮説を発表した。それは、「この洞窟はタイムマシンであり、洞窟を通過する間に過去もしくは未来を通過し現代に出 てくるのだ」というものである。もともとオカルト系の学者の説なので支持者は少なかったが、一部の団体がその説を信じ、定説とするようにキャンペーンを 行った。
 彼らは、生物学の仮説を盾にキャンペーンを続けた。それは、「急激な時間軸の移動を行っている間、人間の心臓の鼓動や新陳代謝は相対的に見て間隔が遅く なる。そして、急激な時間の変化を行えば行うほど間隔が長くなり、体に高負荷をかけ、寿命が縮まる危険性がある。」というものである。ちなみになぜ仮説か というと、人類が未だにタイムマシンを発明しておらず、証明するすべがないためである。
 仮説を証明するために、洞窟をひたすら行き来し、老衰で死のうとしたのだが、キャンペーンに参加した団体のメンバーは全て過労で死んでしまった。ところ が、その説を猛烈に批判していた学者が若くして老衰と同じ症状で死亡したため、この説が有力視されるようになった。やはり「学者の墓場」で奇妙な死に方が 許されるのは、学者のみということであろうか。


 「吸命洞窟」のプロットを書き直しました。内容としてあまり変化は無かったのですが、「学者の墓場」というタイトルの方がいいような気がしたので変更しました。
 「吸命洞窟」は「独り言」へ移動しました。



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