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SSの幼生


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リサイクル
「なぁ、俺たちの仕事って、他人に嫌われるだけだよな。社会的には立派なことをしているんだぜ。でも、どうしてこうも嫌煙されるかなぁ・・・。」
 一人の男が、隣にいる人物に話しかける。
「運転中に話しかけるなよ。ここで事故起こしたら、もっと嫌われるぞ。」
 話しかけられた男は、愚痴る男をいさめた。彼は車のハンドルを握っていた。
「わかりましたよ。嫌われないように静かにしていますよ。」
 彼はそう言って、黙りこくってしまった。
「あぁ、他の乗客はみんな黙っている。お前と違ってマナーがいい。」
 ハンドルを握る男が言う。愚痴を言った彼は、相手にばれぬように笑いをかみ殺していた。

「そうだ、あいつに聞いてみるか・・・。」
「はぁ?」
 信号待ちで止まったら突然、ハンドルを握っていた男がつぶやいた。
「いやな、俺の同僚にマッド・サイエンティーストとしかいえない奴がいるんだよ。そいつがちょっとしたものを発明してな・・・。」
「で、何だよ?それ・・・。」
 答える前に信号が青になる。ハンドルを握る男は答えずに運転を再開した。

「本当にありがとうございます。全然売れなかったんですよ。実は初めての売り上げなんですよ・・・。」
 髪を伸ばし、めがねをかけて、夏なのに白衣を着た男が、冷蔵庫ほどもある装置の横で話をしている。白衣の男が続けた。
「自分で言うのもアレですが、この装置は画期的だと思いますよ。しかし、この使い方はちょっと・・・。」
「いいじゃないか。俺たちが使っているやつも何からできているか分からないんだぜ。」
 ハンドルを握っていた男が、白衣の男に言う。

 翌日、この二人が経営する店の広告が作られた。「石油葬 はじめました」。この大見出しの下には、「世界中の科学者を驚かせた高速石油化装置による石油葬。火葬の約3分の2のお値段で行います」と説明が入っていた。


 石油は昔の生物が変質して作り出されたものです。もしも中に入れたカーボンベースの物質が短時間で石油になるのならば、素晴らしい発明でしょうね。きっと。



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