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SSの幼生


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ここはどこ
「なあ、ここはどこだよ?」
「さあね、見たところお天道様が見えないからなぁ・・・。」
「じゃあどこだ?」
「わからないよ。」
 ふっと気付いたら、僕は見慣れない場所にいた。だから、近くにいた”そいつ”に話しかけたのだが、返ってきた答えは答えになっていなかった。だから、僕は別の”やつ”に話しかけた。
「君はここがどこか分かるか?」
「全然。だいたい、そんなことを知ってどうするって言うんだ?」
「気にならないのか?」
「ならないね。俺は今まで色々なところを見てきたし、色々なやつとも会ったよ。だから、”ここがどこか”とか、”将来どうなるか”なんて気にしないね。」
「そうか・・・。」
 結局、答えは分からずじまい。僕はその場にじっとしていた。いや、実際は何かの中にいて、それが移動しているのであって、本当は移動しているのかもしれない。
「おいおい、神妙な顔になるなよ。俺とお前はここでお別れになるかもしれないが、俺もお前も”存在が消えてしまう”ってことはないはずだからよ。」
 先ほど話しかけたやつが僕の顔を見ながら励ます。本当に心配しているのかは分からないが、黙っているよりかは気が紛れた。
「そうなのか?」
「そうだろう。だってさっきも話したように俺は今まで色々なところを見てきたし、色々なやつに会ったよ。だが、俺は俺であって何も変わっちゃいないからな。」
「だからって、僕が君と同じだとは・・・。」
「俺とお前は似たもの同士だ。きっと大丈夫だ。」
 そこで会話がとぎれた。しばらくの沈黙の後、僕は何かに引っ張られるような感覚を覚えた。今までずっとこの力に引っ張られていたのだが気付かなかったのかもしれない。
 引っ張る力は急激に増し、僕はどこかへ向かっていく。隣でさっき話したやつが「なるようになるさ」という顔でいる。

 何度かの衝撃の後、僕は赤くて黒い空間を見てからまた闇の中へと落ち着いた。幸い、さっき話したやつも近くにいる。
「おい、ここはどこだ?」
「お前は何も知らないのか? さっき、赤い空間が見えただろう?」
「ああ・・・。」
「何かは特定できないが、あれは動物の口だ。」
「どう・・・ぶつ・・・?」
 僕はそんなものを知らないし、僕たち以外の存在であれほど巨大なものは知らなかった。
「まあいいさ。世の中にはそういうものがいるんだよ。」
 隣のやつは、面倒くさそうにそこで説明をうち切った。
「どうなるんだ?」
「まあ、さっきも言ったとおり、存在がなくなるということはないさ。うまくいけば、こいつの体を一巡りして外へ出られるだろう。」
 ”こいつ”と言うときに、やつは黒い空間をちらりと見た。どうやら、”こいつ”というのは”動物というやつ”のことらしい。そんなことよりも、僕はもう片方の場合が気になり、不安は消えなかった。
「もし、”うまくいかなかった”ら、どうなるんだ?」
「しばらくこいつの体の中に取り込まれるだろうな。なあに安心しろ。髪の毛や表皮の細胞に取り込まれれば、すぐにこいつともおさらばだ。変なところに取り込まれても、こいつが死ぬまで待てばいいさ。いずれ、こいつ自身が分解して外へ出られる。」
「とにかく、大丈夫ということなのか?」
「ああ、大丈夫だ。しかし、こんなやつに食われるなんて残念だな。海で大勢の仲間とふらふらしてた方がずっと楽しいぜ。」
 隣のやつはそう言ってため息をついたあと、言葉を続ける。
「俺たちは”飲み込まれる”が、動物たちがいう弱肉強食なんて言葉は当てはまらない。強いて言うなら、運の善し悪しだろうな。・・・運が悪いと食われる。」
 僕にはどういう意味か理解できなかった。しかし、いずれ理解できるだろう。やつの言うように、僕たちの存在が消えることはないはずなのだから。


 水だって、弱肉強食の世界に生きているかも・・・しれませんよ。でも、彼らは意志を伝えているかどうか分かりませんからね。
 ありがとうと書いた紙を貼ったコップの中にできた水の綺麗にできるという話を聞きましたけれど。



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