交錯
目の前には、巨大な石像が建っていた。体からいくつもの腕が生えており、そのほとん
どに大剣を持っている。
「・・・なんだ、これは?」
ワッツがつぶやく。
「これが、奴の言っていた”軍神”の像か。」
「軍神?」
オルリックの言葉にワッツが反応する。
「あぁ、わしの体に取り憑いた時に奴の意志が流れてきてな・・・。この軍神の力で世界
を・・・。」
「血なまぐさい戦いの世界に・・・。」
一瞬、その場が凍り付いた。
「アッシュ・・・、よく知っておるな。」
無口なアッシュが言葉を発しただけでも珍しいのに、オルリックの答を先に行ってしま
うとはどういうことだろうか?
「ふっ、オルリック、お前の後ろにはまだ奴がいるんだぞ・・・、見えないのか?」
アッシュの握っていたテスタロッサがオルリック、ワッツを切り裂いた。
「ダリウスに先を越されてはな・・・。しかし、少々急ぎすぎて余計な犠牲を作ってしまった
ようだ。まぁいい・・・」
そう言ってアッシュは、立ちつくすエリスとヒースにもその刃を向けた。
「アッシュさん。」
ヒースがかすれた声で言う。アッシュは、それが聞こえていないかのように話を続ける。
「どうやら、この剣も俺と同じく血を求めているようだ。そして、あの軍神も。」
アッシュの目が不気味に輝いた瞬間、猛烈な気迫と共にテスタロッサがヒースに迫って
きた。しかし、ヒースに届いたのは気迫だけだった。
「アッシュ!正気に戻って!!」
守護方陣を応用し、精神の壁でヒースを守ったエリスが叫ぶ。
「ふっ、愚かな・・・。」
嘲笑を含んだ顔でアッシュはエリスに剣を振り下ろした。その気迫と、強烈な斬撃は、守
護方陣をいとも簡単に破壊し、一瞬にしてエリスを屍へと変えた。
崩れ落ちるエリス、不適に笑うアッシュ、そして2人を交互に見つめるヒース。
「逃げろ・・・ヒース・・・俺たちにかまうな・・・」
ワッツがうわごとのようにつぶやく。
(血が足りぬ・・・。あの剣士の血も必要だ・・・、死にゆく人の子よ、私の力を与える代わり
にあの剣士を討ってみよ・・・)
「軍神よ、血など俺がいくらでも生み出してやる。死のうとする者をそそのかす気か?」
「アッシュ・・・正気に戻れ・・・。」
ワッツの傷口がふさがり、彼は再び立ち上がった。そして、軍神から放たれた光が彼に剣
を与えた。
「ワッツよ・・・お前は軍神に生かされている死人だ。生身の人間には勝てぬ!!」
「お主とて、その剣に操られているにすぎぬだろう?」
その声と共に、オルリック、そしてエリスも立ち上がった。
「・・・、一体これは・・・?」
現状が全く飲み込めないヒースをよそに、3人はアッシュを取り囲んだ。
「何を思い、軍神と契約を交わした知らぬが、所詮死にゆく者・・・」
最後の言葉を言い終わらぬうちにアッシュは軍神の像に斬りかかった。しかし、それと同
時にワッツがアッシュに斬りかかっていた。そして、オルリック、エリスがあとに続いた。
「血は・・・これで十分なのか?」
かすかにワッツの声が聞こえた気がした。しかし、その時には、軍神の像は崩れ始めてい
た。
軍神の像が崩れ落ちると共に、オルリック、エリス、ワッツは元の屍へと戻っていった。
(残された人の子よ・・・お前は血を欲するか・・・?)
「僕は、もう血なんて見たくない!」
その声は、瓦礫の中から出ている、アッシュ手のあたりから聞こえたような気がした。し
かし、その声は明らかにアッシュのものではない。では何者の問いかけなのか、それを理解
する前にヒースは答えた。
(お前は剣士ではないな・・・、血を欲さぬのだな・・・、しかしその腰には剣を携えている・・・、
なぜだ?)
「アッシュさんに手ほどきを・・・」
ヒースは不気味に感じつつも答えた。そして、アッシュの腕を凝視した。しかし、その腕は
ぴくりとも動かない。
(あの剣士に手ほどきを受けたのか・・・、そうか・・・、ならばあの剣士の意志が分かるだろう?
戦を求め、血を求め、生死の狭間をさまようこと喜びが・・・)
「アッシュさんは確かに僕に剣の使い方を教えてくれた!でも、そんなことは何一つ言わな
かった!」
アッシュをかばうかのようにヒースは叫んだ。
(そのような心持ちで剣を携えていたとは・・・)
瓦礫の中からテスタロッサが飛び出し、ヒースの胸元へ突き刺さった。
(血を求める剣士を師に持ち、血を求める心が無いとは・・・。私の見る目が無かったようだ。
今しばらく有能な人間を待つとしよう・・・)
その日以来、妖精の塔の奥深くで血に飢えた聖剣テスタロッサは、己と同じ心を持つ人間
を待ち続けているという・・・。
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ダイナソアのパロディーです。もう何でもありです。
ファンのみなさん、これを読んで気分を害されたのならばごめんなさい。
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